日本 89 - 109 オーストラリア
奮闘するも力及ばず。
本気でオーストラリアを倒すためのプランを組んで試合に臨んだ日本。
しかしオーストラリアは強かった。
日本の全力とオーストラリアの実力の殴り合い、そんなこの試合を解説していく。
試合展開
日本はこの試合、序盤・中盤・終盤で異なるディフェンスを見せた。
序盤はDrop、中盤はZone、そして終盤はSwitch。
このプランにはおそらく、
ディフェンスで仕掛けてオーストラリアのリズムを崩す、という日本の意図があったと思う。
格上のオーストラリア相手に日本が勝機を見出すには、たしかにこれがベストなプランだった。
ただ、オーストラリアの順応が想像以上に早かった。
それによって日本は「この時間までこのディフェンスで耐える!」というプランを逆に崩されることとなった。
では、具体的にどのような攻防が各時間帯で起こっていたのか。
PnRを巡る駆け引きに絞って、1プレーずつ振り返っていく。
日本のDefプランその1:Drop
日本のDropには以下2つのポイントがあった。
①ミルズ、イングルスへのハードプレッシャー
②ギディーのドライブ阻止
というわけでこの2つのポイントに着目していく。
1Q 10:00
Empty Angle PnR (vs Chase) - Pull Up
まずはミルズがHandler。
x1の河村がChaseでものすごいプレッシャーをかけ続ける。
x5のホーキンソンもDropを浅めにして、ミルズに前方のスペースも与えない。
このようにしてオープンを与えないまま、ミルズにプルアップを打たせることに成功。
開始早々、ミルズを自由にさせない工夫がよく分かるポゼッション。
日本にとって幸先の良いポゼッションだった。
1Q 5:09
Stack Out Rip - Corner Filled PnR (vs Ice) - Flip Screen - Roll Feed
今度はイングルスがHandler。
x3の馬場がプレッシャーをかけてサイドライン側へ誘導。
x4の渡邊も先程のホーキンソン同様、浅めのDropでプルアップに備える。
しかし相手は役者のイングルス。
"渡邊のDropが浅い=裏のスペースが空いている"
と考えてRoll Feed。
パスを受けたScreenerは、無人のペイントエリアでダンクを決めた。
オーストラリアは4をOne Pass Awayに配置することで、x5のホーキンソンをペイントエリアから排除する工夫もきっちり入れていたのも大きかった。
1Q 4:40
High PnR (vs Chase) - Kick
先程の次のポゼッション。
再びイングルスvs馬場。
今度は馬場のハードプレッシャーがイングルスを苦しめる。
馬場のおかげでイングルスへの警戒を弱める余裕ができたx5のホーキンソンは、DiveするScreenerへのパスをケア。
どうしようもなくなったイングルスはかろうじてキックアウトするも、その後も日本ディフェンスが守りきった。
このポゼッションは直前の1Q 5:09と違って、x4の渡邊がペイントエリアでRim Protectionできる配置だったのも日本に有利に働いた。
1Q 3:42
High PnR (vs Under) - Roll Feed (TOV)
次はギディーがHandler。
対するx1はサイズで劣る富樫。
ギディーはそこまで3ptが得意な選手ではないため、日本はUnderで守る。
Underされたギディーは富樫をドライブで押し込もうとするが、Dropするホーキンソンが富樫をサポート。
中途半端なRoll Feedでターンオーバーを誘発した。
ホーキンソンのRim Protectionは十分に相手の脅威となっている。
まさに日本の大黒柱。
1Q 1:15
Empty DHO (vs Chase) - 45 Cut
ここではイングルスがHandler。
日本はいつも通りx2の富永がハードプレッシャー、x4の渡邊は浅いDrop。
また、One Pass Awayからはx3の吉井がヘルプで富永をサポート。
さらにここではx5のホーキンソンが、DiveするScreenerへのTagも行うという万全の体制。
しかしオーストラリア。
3のギディーが日本のすべてのディフェンスを欺くBack Cut。
イングルスからのパスを受けてイージーレイアップ。
PnRが日本にめちゃくちゃ警戒されていることを逆に利用したオーストラリア。
特にHandlerのイングルスの目線の使い方が上手かった。
ギディーのBack Cutを誰にも察知させずにパスを出す完璧なアシストだった。
1Q終了
日本 17 - 25 オーストラリア
他の要素で少し点差がついているが、PnRに関しては見てきた通り一進一退の攻防となっている。
しかし2Qにオーストラリアは、日本ディフェンスを攻略する明確な答えを導き出していく。
2Q 5:38
Stack Out - Double Drag (vs Chase) - Pull Up
日本のハードプレッシャーに苦労するオーストラリア。
そこで、スクリーンの数を1枚から2枚に増やすことを考える。
Handlerはミルズ、対するx1は富樫。
富樫は必死でミルズにChaseするも、2枚のスクリーンにより僅かなズレを与えてしまう。
ミルズはこの瞬間を見逃さず、プルアップを決める。
オーストラリアの工夫も素晴らしいが、何よりもミルズのシュートまでのスピードとその滑らかさが卓越している。
2Q 4:32
High PnR (vs Under) - Push Screen - Roll Feed
今度はギディーがHandler。
対するx2は原。
1Q 3:42でも見たように、日本はギディーに対してUnderを徹底。
そこでオーストラリアはUnder攻略のPush Screen。
Underする原はScreener Rollに巻き込まれ、ギディーに振り切られる。
そこでx5のホーキンソンはギディーのドライブをケア。
しかしそれを見たギディーは冷静にRoll Feed。
パスを受けた5がきっちりショットを沈めた。
2Q 3:55
Miami (vs Under) - 45 Cut
今度はエクサムがHandler、対するx2は馬場。
オーストラリアは再びスクリーン2枚作戦を発動。
馬場は、DHOとスクリーンの2枚でエクサムに振り切られる。
ただ、1Q 1:15同様、x3によるOne Pass Awayからのヘルプで、エクサムへのハードプレッシャーを保つ。
しかしここでもオーストラリア、というよりギディー。
自分のマークマンが自分を捨ててヘルプに行ったのを見逃さず、今回もBack Cut。
1Q 1:15と全く同じようにオープンになり、パスを受けてレイアップ。
スクリーン2枚でHandler's Dを剥がす。
さらにそのHandlerへのヘルプを出し抜くBack Cut。
もうこれはオーストラリアが上手としか言いようがない。
2Q 2:55
Empty PnR (vs Chase) - Snake - Kick
Handlerはミルズ、対するx2は原。
今度はスクリーン1枚。
ミルズはSnakeで原のハードなChaseを振り切り、ペイントエリア深くまでドライブ。
x4の渡邊はたまらずミルズに引きつけられる。
しかし、それを待っていたかのようにミルズはキックアウト。
ワイドオープンの4が3ptを決める。
スクリーンの枚数が少ない分、Snakeという今度はスクリーンの使い方の工夫でハードプレッシャーを攻略したミルズ。
これもさすがだった。
日本のDefプランその2:Zone
2Qに入り、Dropを見事に攻略されてしまった日本。
そこでディフェンスシステムをZoneに変更。
2-3と3-2の形でZoneを組んだ。
オーストラリアのZone Attackは主にNailを中心としたギャップへの飛び込みと、パスの連続でワイドオープンを作る感じ。
ここでPnRはほとんど使われなかったため、3Q終盤まで続いたZoneの攻防は割愛する。
2Q終了
日本 35 - 57 オーストラリア
オーストラリアがDropを完全攻略したことにより、一気に点差を開げられてしまった日本。
しかし、Zoneで空気を変え、3Qではオフェンスも調子を上げてなんとか食らいついていく。
そして3Q終盤、日本は3つ目のディフェンスシステムに変更。
最後の勝負をかけていく。
日本のDefプランその3:Switch
3Q 1:38
Corner Filled PnR (vs Switch) - 1on1
Switchにより、ミルズvsホーキンソン。
スピードで劣るホーキンソンだが、長い腕でショットコンテスト。
見事にミルズのショットミスを誘った。
そしてリバウンドは、Tag SwtichでScreenerのマークを引き継いでいたx2の富永が全力ボックスアウト。
そこにx4の渡邊とx3の吉井が駆けつけることで、見事にリバウンド確保。
Switchに切り替えて早々、良いディフェンスができた。
特に日本のTag Switchはさすがに洗練されている。
3Q終了
日本 70 - 87 オーストラリア
Switchに切り替えて最後のスパートを目指す日本。
ぎりぎり間に合う点差で4Qに突入していく。
4Q 8:48
High PnR (vs Switch) - Feed - DHO - Hit Back (TOV)
再びSwitch。
今度はギディーvsホーキンソン。
ギディーは先ほどのミルズと違って、3ptを警戒しなくてもある程度大丈夫な相手。
よってx5のホーキンソンは少し間合いを空けて守る。
目論見通りギディーの選択肢を奪うことに成功。
苦しくなったギディーのパスを、最終的にx3の吉井がインターセプト。
4Q 8:05
Empty PnR (vs Switch) - Roll Feed
Switchで再びギディーvsホーキンソン。
しかしギディーはもう迷わない。
Switchした瞬間のホーキンソンに対して、ギディーは勢いよくドライブ。
ホーキンソンをペイントエリア深くまで押し込んで、他のディフェンスの注意を引きつける。
そして、DiveするScreenerがオープンになったのを見逃さずにRoll Feed。
ここではギディーにレイアップを演出されてしまった。
4Q 7:00
Stack Out - Split (vs Switch) (TOV)
今度はミルズ。
Split Actionで、2Qのように2枚のスクリーンを使ってくる。
しかしx1の富樫は、スクリーンを2枚とも上手く避けてミルズへのプレッシャーを維持。
ハンドオフが乱れたミルズはファンブルを起こす。
その瞬間、富樫が本来はSwitchするところで咄嗟にBlitzを選択し、ミルズを追い詰める。
苦し紛れのパスを出させて、見事にターンオーバーを誘った。
ディフェンスシステムをSwitchに変更してリズムを掴みかける日本。
2試合連続の大逆転を期待する雰囲気が会場に漂う。
オーストラリアはたまらずタイムアウト。
しかし、このタイムアウト明け、日本に傾きかけた流れをオーストラリアが再び取り戻していく。
その中心となったのは、ギディーだった。
4Q 6:05
Double Drag (vs Switch) - MUM
Double Dragに日本はAll Switch。
ミルズvsホーキンソン、かと思われたが、オーストラリアの狙いは別にあった。
それは、ギディーvs富樫。
Double Dragの1枚目Screenerであるギディーのところのミスマッチを狙ってきた。
ポジションを取られた富樫はファールで止めるしかなかった。
これまでHandlerの1on1を繰り返していたのが良いフリとなって生まれた、ギディーの1on1だった。
4Q 3:55
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Switch) - Drive Layup
今度はギディーがHandler。
まずミルズとのFlipでSwitchさせ、vs富樫を作る。
続けてのPnRでx5のホーキンソンを誘い出し、その瞬間に勢いよくドライブ。
ホーキンソンを置き去りにしてレイアップを決めた。
vs富樫、vsホーキンソンと、1つずつ丁寧に有利なマッチアップを作ってきたオーストラリア。
日本はこの1on1を止められるかどうかに全てが懸かっている。
4Q 3:15
Horns Out Flip - Corner Filled PnR (vs Switch) - Drive Layup
再びギディー。
FlipからPnRで、今回もギディーvsホーキンソン。
今度は抜かれないように、ホーキンソンは距離を取って守る。
対するギディーは空けられた間合いでトップスピードまで加速してドライブ。
ペイントエリアで待ち受けるホーキンソンは、スピードに乗ったギディーとのコンタクトを受け止めきれず。
今回もレイアップを許してしまった。
3Q終盤からSwitchしている日本。
その間、ホーキンソンはずっとギディーやミルズとの1on1を繰り返してきた。
言うまでもなく、ホーキンソンの疲労はすでにピークに達している。
4Q 2:40
High PnP (vs Switch) - Hit Back - Pull Up
日本のSwitchを利用して何度でも狙ってくるギディーvsホーキンソン。
2連続でレイアップを許していること、そして疲労困憊であることから、ホーキンソンはやはり距離を取って守る。
一方、連続得点でノリノリのギディーは、これまで選んでこなかったプルアップスリーを選択。
そして、これを決めた。
このギディーの3ptがとどめの一撃となり、このまま試合終了。
4Q終了
日本 89 - 109 オーストラリア
総括
Drop、Zone、Switchの3つのディフェンスシステムを繰り出した日本。
この多様なディフェンスに、オーストラリアもはじめは毎回手を焼いた。
ただ、そこから攻略法を見つけるまでが早かった。
Dropにはスクリーンを2枚にしたり、One Pass Awayが45 Cutしたり。
そしてSwitchにはギディーvsホーキンソンのMUM。
このような戦術的順応を可能にしていたのは、ギディーをはじめとしたオーストラリアの個人能力。
こういった面でも、やはりオーストラリアは強かった。
ただ、そのオーストラリアに日本がこれだけ抗えたのは、評価されるべきことだと思う。
今回はまだ勝てなかったが、日本が強くなってきていることを相対的にもひしひしと感じられる内容だった。
勝てなくても面白い試合ができるのは、ファンとしてめちゃくちゃ魅力的。
日本代表のこれからに期待がかかる。
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