ドイツ 81 - 63 日本
ついに迎えたW杯初戦。
ドイツが想像を超える強さを見せつける試合となった。
その鍵を握ったのは、ドイツのストレッチビッグマンの活躍。
ドイツはビッグマンたちをどのように活用して、ペイントエリアにスペースを生み出し続けたのか。
図を用いて、戦術的に振り返っていく。
ドイツの日本ディフェンス攻略
前半
1Q 8:20 ドイツ
AI - Wedge Roll (vs Drop) - Drive Layup
AI CutからEmpty PnRを作るプレー。
注目したいのは3コマ目。
ドイツはx4の渡邊にマークされる5を右サイドのWingに配置し、渡邊をペイントエリアから排除。
これによって渡邊は、2のドライブをペイントエリアでRim Protecterとして待ち受けられなかった。
それでも渡邊はWingからRim Protectionを試みるが、相手も上手い。
結局レイアップを防ぐことはできず。
このようにドイツはPnRの際に、DropするScreener's D以外のビッグマンがペイントエリアを守れない配置を徹底していた。
実はこの工夫は前回の強化試合、スロベニア戦でも再三狙われていた形。
スロベニア戦では解決策を見出せないまま試合終了してしまった。
ただ、前回と今回で決定的に違うポイントが1つある。
それは、今回は渡邊雄太がいるということ。
渡邊雄太とホーキンソンのフロントコートコンビを結成したことで、日本はPnR Coverageをほとんどの場面で Drop に固定。
スロベニア戦と今回のドイツ戦とでRim Protecterの枚数を減らされる配置に苦しむことに変わりはないが、ShowかDropかの違いは生まれた。
1Q 7:45 ドイツ
High PnR (vs Drop) - Angle Change - Kick Extra - C&S (Put Back)
ドイツは今回も4をWingに配置。
これにより、4をマークする日本のx5がペイントエリアから排除され、Rim ProtecterはDropするx4のみに。
Deep Sealまでは原(x3)のヘルプで凌ぐも、最終的にリバウンドで力負け。
最初にx5が排除されたことで、ペイント内の高さと枚数が足りなくなっていた。
1Q 4:10 ドイツ
Empty PnP (vs Ice & Blitz) - Drive to Post - Drive Layup
Empty PnPでPopしたワグナー兄がパスを受けて、カウンタードライブからPost Up。
この1on1に合わせた4のStretchで、Rim Protecterであるx4はペイントエリアからしっかり排除される。
広く空いたスペースで、ワグナー兄が1on1からレイアップ成功。
これまでの強化試合と違ってShowしなくなってワイドオープンを作られることは少なくなったが、それでもペイントエリアのディフェンスの分厚さが削がれている。
それだけにこの場面は、Weak-Cornerのx3(馬場)のヘルプが欲しかった。
ヘルプに出てワグナー兄を止められるかは分からないけれど、配置的にx4がRim Protecterになれない以上、行くしかない。
その点、1Q 7:45の原が見せたDeep Sealへのヘルプにはすごく勇気を感じた。
Rim Protectionをビッグマンだけに背負わせず、必要な時は誰であってもヘルプに向かう意識が大切なんじゃないかと思う。
1Q 2:35 ドイツ
Corner Filled PnR (vs Drop) - Lift Feed - Drive Kick - C&S
Weak-Wingにビッグマンを配置するCorner Filled PnR。
例によってx5がペイントエリアから排除されているため、Rim Protectionはできない。
かといって不慣れなOne Pass Awayでのヘルプをやれば、この場面のようにキックアウトに反応できずにワイドオープンを与えてしまう。
この後もドイツはビッグマンのStretchとPostを活用してじりじりと点差を空けていき、前半終了。
後半
試合は進んで3Q。
後半になっても、ドイツのオフェンスの軸とその威力は変わらない。
3Q 7:18 ドイツ
Corner Filled PnR (vs Ice) - Slip - Short Roll Feed - Floater
この試合おなじみの、Wingにビッグマンを配置してx5をペイントエリアから排除するアライメント。
これにより、Slipした4へのTagはx5がWingから無理やり行くしかなかった。
これではやはり十分なRim Protectionにならない。
x5の無理矢理なTagを冷静に対処して、フローターをあっさりと決めきるタイスはさすが。
3Q 6:24 ドイツ
High PnR (vs Drop) - Drive Layup
ドイツはx5にマークされる5をWingに配置。
よって日本はここでもx5がペイントエリアから排除されており、Rim ProtecterはDropするx4(渡邊)のみ。
いくら渡邊とはいえ、加速したワグナー弟のドライブを1人で止めることは難しい。
渡邊とホーキンソンのDropは、これまでの数試合を経て辿り着いた日本のベストな守り方。
それでも止められない相手が世界にはいる。
それを痛感させられている。
3Q 3:50 ドイツ
High PnR (vs Drop) - Short Roll Feed - Kick - C&S (Put Back)
ドイツは5をOne Pass AwayのCornerに配置。
このアライメントもWingに配置する時と同様に、x5にRim Protectionさせない効果を持つ。
というわけでx5がTagに参加できず、最終的にプットバックで失点。
ペイント内の枚数の乏しさは、当然リバウンドにも影響する。
今回もx5がRim Protecterから除外されたわけだが、代わりにx2(原)が果敢にTagしていた。
このTagをすることで、少なくともRoll Feedからのイージーレイアップは阻止している。
ポジション関係なく、この姿勢は間違いなく大切にすべきポイント。
3Q 2:03 ドイツ
Corner Filled PnR (vs Drop) - Roll Feed
Weak-Wingに4を配置。
したがって今回もx4がペイントエリアから排除され、Rim ProtecterはDropするx5のみに。
また、前半に2回ほどSingle SideからTagした瞬間にパスされたことも影響してか、x2もTagできず。
そういうわけで誰もTagできなかった結果、最後はDiveがぽっかりオープンに。
Tagを引きつけてパス、のパターンを1Qから繰り返し成功させてきたドイツ。
日本がそのパターンに対応しようとしたことで、終盤にして逆に一番シンプルな選択肢に行き着くという面白さ。
駆け引きが1周した瞬間を示すポゼッションだった。
4Q 6:36 ドイツ
Horns PnR (vs Drop) - Roll Feed
この場面も3Q 2:03と同様の駆け引きが起こった。
Horns PnRにより、ビッグマンが2人とも3ptラインに釣り出される。
そのため、当然このプレーでRim Protectionさせてもらえるのは、Dropするx5のみ。
x4がTagできない代わりにx1がTagするしかない状況に追い込まれた日本。
ただ、x1はTagに出ることでワイドオープンになる1へパスされることを何よりも警戒。
その結果、一番パスされたらまずい5がワイドオープンになってしまった。
1周まわった駆け引きが再び見られたところで、この試合はドイツに軍配が上がった。
総括
ドイツはビッグマンをWingに配置するアライメントで攻撃を組み立てて、日本のRim Protecterをペイントエリアから排除していた。
日本はこのパターンに対して答えを見つけられずに同じ形の失点を繰り返してしまった、といった内容。
今回のドイツ戦のような、配置の工夫でRim Protecterの枚数を減らされて失点するこのパターン。
これは、強化試合の時からずっと引きずっていた問題。
正直、この問題の構造的な解決は、日本代表のロスター構成的にかなり厳しい。
ただ、改善できる余地は残っていると思っている。
日本ディフェンスの改善案
それは、
アウトサイド陣のハードワーク。
1〜3番のプレイヤーは以下2つのことが、Defではまだまだできるはず。
- ボールプレッシャー
- Tagへの参加
1. ボールプレッシャー
ペイントエリアにスペースを作られる以上、ペイントエリアに入れさせない努力は必須。
須田を落選させたことは悔やまれるが、河村を中心として、激しさで諸々の弱点を補うことはまだまだできるはず。
2. Tagへの参加
ビッグマンがTagできる時にはわざわざ参加するべきでないが、そうでない時は、誰であろうとTag参加するべきだと思う。
それで1Q 7:45や3Q 3:50の原のようにレイアップを阻止してキックアウトさせることがあれば、大成功と言えるはず。
このTag参加は、特に馬場と吉井にもっと期待したいところ。
チーム全体として、オフボールでもっとファイトを見せられると思う。
次のフィンランド戦に向けた結論
ということで結論としては、もう構造上の問題については割り切ること。
そして、改善の余地が残っている「魂」の部分に意識を向けて、適切な場面で個人のプレー強度を上げること。
それが次のフィンランド戦、日本のDef成功の可能性を高め、日本を大きな1勝へと導くのではないだろうか。
次戦のフィンランド戦のGame Reviewはこちら!
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