日本 80 - 71 カーボベルデ
見事に自力でのパリ五輪出場権獲得を決めた歴史的な試合。
ほとんどの時間帯で、日本が攻守ともに主導権を握り続ける試合だった。
その要因の1つは、日本のディフェンス。
カーボベルデのメインとなるセットオフェンスをほぼ完封したことが大きかった。
ということで今回は、そのカーボベルデのセットオフェンスを巡る駆け引きに着目して、戦術的に試合を振り返っていく。
試合展開
1Q 1:15
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Slip
Horns FlareからサイドでのPnRが、カーボベルデお決まりのセットオフェンスだった。
これを日本はIceで守っていく。
Iceで方向付けするメリットとしては、ScreenerをTwo Men Sideにダイブさせやすい点が挙げられる。
これにより、ScreenerへのTagとキックアウトへのRotationを2人で行うことができる。
この場面ではSlipするScreenerに対して、x2とx5が2人がかりでTag。
さすがのタバレスもこれではまともにレイアップできなかった。
2Q 7:42
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Slip - Kick
2QもHorns Flareから↑と同様のプレー。
日本は今回もIce。
カーボベルデのSlipとRoll Feedに、日本はx5のホーキンソンがTag。
必然的に4がワイドオープンになるが、そこへx2の富永がパスコースを塞ぎながらの完璧なRotation。
その後のカウンタードライブもきっちり対応。
最終的には不運なファールが吹かれたが、駆け引きとしては完全にディフェンスの勝利。
逆サイドのWingに4を配置するアライメントは、これまで日本が何度となく苦しめられてきたやり方(特にドイツ戦)。
この配置で以下のような論理が働くと、これまで日本ディフェンスはどう頑張っても守れない状況になっていた。
x4がWingに釣り出される
↓
x4がペイントエリアから排除される
↓
Rim Protecter不在のペイントエリアを守りきれない
ただ、今回カーボベルデに同じやり方をされても、日本はそこまで苦しくなかった。
というのも、4の3ptやドライブが日本にとってそこまでの脅威ではないため、x4が自分のマークマンを捨ててTagすることに躊躇がないのである。
そのため、日本にとっては構造的に守りようがなかったパターンに頭を悩まされる心配が少ない試合となっている。
前半終了
日本 50 - 37 カーボベルデ
Horns FlareからCorner Filled PnRのパターンでは、Iceに苦戦したカーボベルデ。
そこで、3Qからは違うパターンを見せてくるようになる。
3Q 10:00
Horns Flare - Side Change - DHO through - High PnR (vs Chase) - Roll Feed (Clearout)
Horns FlareからPnR、ではなく、Side ChangeしてDHOのパターン。
おそらく、「x3にはIceされちゃうけどサイドを変えてx1を狙えば、Iceされることはないだろう!」という発想。
日本はx1がIce(Top lock)こそしなかったものの、Fight Overの意識が非常に高かった。
そのためカーボベルデが想定していたDHOは実行させず、最終手段のHigh PnRまで追い詰める。
ただ、最後の最後で意図的かどうか分からないがClearoutをきれいに決められた。
失点したものの、セット自体はよく対応できていた。
3Q 9:20
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Drive Layup
今度はHorns FlareからPnRのパターン。
ここではカーボベルデのHandlerが非常に上手かった。
Iceするx3にRejectを匂わせる。
x3がRejectに反応して方向づけが甘くなった瞬間、Handlerの3はスクリーンを使う。
One Pass Awayからはx5もヘルプできず、ペイントエリアは手薄に。
そのスペースでこれまた巧みなSwing Stepでx4の渡邊をかわしてレイアップを決めてきた。
Iceされても工夫してスクリーンを使うことで、日本がこれまで阻止していたペイントアタックを成功させた。
上手かった。
3Q 8:40
Horns Flare - Side Change - High PnR (vs Switch)
ここでは再びSide ChangeからDHOのパターン。
ただ、x2のディナイにより、今回も3と4のDHOを阻止。
日本ディフェンスはここでも最終手段のHigh PnRまでカーボベルデを追い詰める。
ショットクロックが迫ってきている状況を踏まえて、日本はこのHigh PnRで思い切ってSwitch。
このSwitchが功を奏して、2のドライブをx4の渡邊が完封。
そしてリバウンドから速攻に繋げ、馬場がダンクを叩き込んだ。
3Q 4:52
Horns Flare - Side Change - High PnR (vs Chase) - Drive Kick
再びカーボベルデはSide ChangeからDHOを試みる。
しかしここでも日本のx3がきっちりディナイ。
Back Cutにも問題なく対応。
カーボベルデを3連続で最終手段のHigh PnRへと追い込んだ。
High PnRはChaseとDropで対応。
そこにx4の渡邊がOne Pass AwayのCornerからヘルプ。
キックアウトにも十分なクローズアウトを見せ、3ptミスを誘った。
高い集中力をもって、カーボベルデのセットオフェンスをことごとく守りきっている日本。
カーボベルデに反撃の隙を与えない。
3Q 4:08
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Reject - Angle Change Pass - Kick
Side ChangeからDHOは厳しいと判断したカーボベルデ。
PnRのパターンに戻すことを選択。
日本はこれまで通りIceで対応。
HandlerのRejectを誘う。
カーボベルデのHandlerは、Rejectでx4のTagを引きつける。
そしてAngle Change Passの形で4経由で5にRoll Feed。
ただ、Deep Sealした5をx5のホーキンソンがしっかりと守る。
キックアウトを出させて2がカウンタードライブしたところ、アウトオブバウンズ。
Iceへの答えがいまだに見つからないカーボベルデ。
このあたりの修正力も、やはり1次ラウンドの相手とは少し格落ちする印象がどうしてもある。
3Q 1:48
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Reject - Kick Extra
今回もHorns FlareからPnR。
日本はIceして、カーボベルデはRejectを選択。
何度も見た駆け引き。
日本の誘導に乗せられている感のあるカーボベルデ。
なんとかキックアウトとエクストラパスを繋いでオープンを作るも、3ptは外れる。
x2の富永のRotationがずっと素晴らしい。
Cornerの2へのパスコースを塞ぎながら4にクローズアウトすることで、簡単にはエクストラパスを出させなかった。
富永の知性あふれるディフェンスは、もっと評価されるべき。
3Q終了
日本 73 - 55 カーボベルデ
ここまでHorns Flareから
・PnR
・Side Change - DHO
の2パターンを試すもうまくいかなかったカーボベルデ。
そこで4Qになると、さらに毛色を変えたパターンを使ってくるようになる。
4Q 9:40
Horns Flare - Side Change - Post Cancel - Flash
4Qになって使った3つ目のパターン。
それはPost。
Side Change (Flare Feed)からDHOではなく、3が直接Post Upする展開。
2番3番のサイズ差を狙ってのオプション。
ただ、日本ディフェンスの集中力は非常に高い。
x2の富永は突然のPost Upにも遅れをとることなくハードディナイ。
x5のホーキンソンも、富永の背後へのパスに反応できるポジショニングで富永を援護。
Post Feedできなかったカーボベルデは、ホーキンソンに捨てられている5がFlash。
Elbowでワイドオープンのジャンパーを放つも、ショットは外れた。
このようにカーボベルデは、ビッグマンのシュート力があと少しあれば、という場面が要所要所で見られた。
4Q 9:00
Horns Flare - Side Change - Post
続けてHorns FlareからPostのパターン。
カーボベルデは今度はスムーズにPost Feed成功。
Post Upする3とマッチアップするのはx1の河村。
日本としてはマッチアップ的にピンチの状況。
ただ、先程同様、背後のスペースをケアしていたホーキンソン。
3のドライブにリング前で立ちはだかる。
完璧なRim Protectionでショットを防ぎ、河村を助けた。
ホーキンソンの完璧なRim Protectionの背景には、少なからず前回のポゼッションが影響していたと思う。
前回Elbowでショットミスしたことで5の引力が弱まり、ホーキンソンは河村のサポートに回りやすい状況が生まれていたと説明がつく。
4Q 8:08
Horns Flare - Side Change - DHO - Kick - Post Kick
3つ目のPost Upパターンも2連続で封じられたカーボベルデ。
Side ChangeからDHOのパターンに回帰する。
ただ、このパターンもこれまで成功してきたプレーではない。
そのため日本も難なく守りきった。
どうやってもHorns Flareのセットオフェンスが成功しないカーボベルデ。
そこでセットオフェンスにこだわることを断念し、シンプルな1on1 (主にPost)とタバレスの理不尽OREB狙いに舵を切る。
それが見事に大ハマり。
スタミナが切れてきてボックスアウトの強度が落ちたホーキンソンをよそに、タバレスがOREBを取りまくる。
シンプルなプレーとセカンドチャンスで得点を積み重ねていき、みるみる点差を縮めていく。
気づけば6点差。
しかし、タバレスがこのあたりでTOVやテクニカルファールを連発。
カーボベルデの怒涛の勢いが落ち着き、ラスト2分は一進一退の雰囲気に。
そこでカーボベルデは1本確実に取りに行くために再び、セットオフェンスを発動する。
4Q 2:05
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Ice) - Reject - Feed
カーボベルデがラストに選んだのは、原点回帰、PnRのパターン。
日本はこれまで通りIceで守る。
その結果は、日本ディフェンスの勝利。
カーボベルデはやはりIceに対して手立てを見出せず、苦しい1on1に追い込まれてショットをミスした。
その後、ホーキンソンのエンドワンと3ptでカーボベルデを突き放した日本。
なんとか逃げ切って試合を終えることができた。
4Q終了
日本 80 - 71 カーボベルデ
総括
見てきたように、カーボベルデのセットオフェンスをほぼ完封した日本。
ここは1本確実に!というポゼッションをことごとく守りきったことで、3Qまではリズムを掴ませず、そして4Qでは逆転の風を吹かせなかった。
素晴らしいディフェンスで勝利を手繰り寄せた。
一方でカーボベルデとしては、Iceへの手立てまたはビッグマンのシュート力があれば、また違う試合展開を作れていたかもしれない。
それはそれでどうなっていたのか興味深い。
ということで、順位決定ラウンド全勝でパリ五輪出場権獲得を自力で決めた日本。
おめでとう!
強化試合から8試合続けてきたGame Reviewシリーズもこれにて終了となります!
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